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京都地方裁判所 昭和60年(わ)1303号 判決

本籍

京都市北区小松原北町一一八番地

住居

京都府八幡市男山長沢一七番地の七

貸ビル業

西川平

大正九年九月一五日生

右の者に対する相続税法違反幇助被告事件について、当裁判所は、検察官關本倫敬出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金八〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、昭和四八年一〇月ころから同六〇年六月一七日までの間、京都市中京区富小路通押小路下る橘町六三一番地の三西川ビル五階に西川平事務所を設けて税理士の業務に従事していたものであるが、

第一  駒井弘、全日本同和会京都府・市連合会会長鈴木元勤丸、同連合会副会長村井英雄、及び同連合会事務局長長谷部純夫らが共謀のうえ、右駒井弘の実父駒井平四郎が同五六年一二月二四日死亡したことに基づく右駒井弘の相続財産にかかる相続税を免れることを企て、右駒井弘の相続財産の実際の課税価額が一億七、九〇七万一、七四二円で、これに対する相続税は三、五三四万五、九〇〇円であるにもかかわらず、被相続人の右駒井平四郎が有限会社同和産業から七、〇五〇万円の債務を負担しており、右駒井弘において右債務のうち六、七五〇万円を承継し全額支払った旨仮装するなどして、同五七年六月二三日、同市東山区馬町通東大路西入新シ町所在所轄東山税務署において、同署長に対し、右駒井弘の相続財産の課税価額が一億一、一五七万一、七四二円で、これに対する相続税額は一、五六六万八、六〇〇円(ただし、申告書には特別農地の評価の誤りのため、課税価額が一億一、〇四七万一四二円で、相続税額は一、五三九万二、一〇〇円と記載)である旨の虚偽の相続税の申告書を提出し、もって不正の行為により右相続にかかる正規の相続税額三、五三四万五、九〇〇円との差額一、九六七万七、三〇〇円を免れた際、同年五月三一日ころから同年六月一七日ころまでの間、前記西川平税理士事務所等において、右情を知りながら、右相続税の申告書等を作成するなどし、もって右駒井弘らの右犯行を容易にならしめてこれを幇助し

第二  澤田圭司、澤田昭子、前記鈴木元動丸、同長谷部純夫及び小原靖弘らが共謀のうえ、右澤田圭司の養父であり、右澤田昭子の実父である澤田幸太郎が同五七年一月五日死亡したことに基づく右澤田圭司、同澤田昭子の両名の相続財産にかかる相続税を免れることを企て、右澤田圭司の相続財産にかかる実際の課税価額が一億三、六三二万八、四七三円で、これに対する相続税額は三、七三七万八、〇〇〇円であり、右澤田昭子の相続財産にかかる実際の課税額が一億八五六万六、一〇五円で、これに対する相続税額は二、九七九万六、三〇〇円であるにもかかわらず、被相続人澤田幸太郎が前記有限会社同和産業から一億七、三〇〇万円の債務を負担しており、右澤田圭司においてそのうちの九、三〇〇万円を、右澤田昭子においてそのうちの八、〇〇〇万円をそれぞれ承継したと仮装するなどして、同七月三日、同市右京区西院上花田町一〇番地の一所在所轄右京税務署において、同署長に対し、右澤田圭司の相続財産にかかる課税価額が四、三三七万四、四七三円で、これに対する相続税は五一九万二〇〇円であり、右澤田昭子の相続財産にかかる課税価額が三、一五八万八、七〇五円で、これに対する相続税額は三七七万八、二〇〇円である旨の虚偽の相続税の申告書を提出し、もって不正の行為により、右相続にかかる右澤田圭司の正規の相続税額三、七三七万八、〇〇〇円との差額三、二一八万七、八〇〇円及び右澤田昭子の正規の相続税額二、九七九万六、三〇〇円との差額二、六〇一万八、一〇〇円をそれぞれ免れた際、同年六月二一日ころから同年七月二日ころまでの間、前記事務所等において、右情を知りながら、右相続税の申告書等を作成するなどし、もって右澤田圭司らの右犯行を容易ならしめてこれを幇助し

第三  西村博、西村博文、山田廣子、前記鈴木元動丸、同長谷部純夫及び前記連合会八幡支部長西村昭和らが共謀のうえ、右西村博、同西村博文、同山田廣子の実父である西村正明が同五七年五月二四日死亡したことに基づく右西村らの相続財産にかかる相続税を免れることを企て、右西村博の相続財産にかかる実際の課税価額が六、二一六万五、〇七八円で、これに対する相続税額は二、〇七〇万四、二〇〇円であり、右西村博文の相続財産にかかる実際の課税価額が二億五、〇九五万八、四六七円で、これに対する相続税額は九、二〇〇万二、二〇〇円であり、右山田廣子の相続財産にかかる実際の課税価額が七、三四三万四、一九四円で、これに対する相続税額は二、六八九万二、九〇〇円であるにもかかわらず、被相続人の右西村正明が前記有限会社同和産業から二億七、五〇〇万円の債務を負担しており、右西村博においてそのうちの四、〇〇〇万円を、右西村博文において同じく一億八、五〇〇万円を、右山田廣子において同じく五、〇〇〇万円をそれぞれ承継したと仮装するなどして、同年一一月一七日、京都府宇治市大久保町井ノ尻六〇番地の三所在所轄宇治税務署において、同署長に対し、右西村博の相続財産にかる課税価額が二、二一六五万五、〇八七円で、これに対する相続税額は一六一万八、五〇〇円(ただし、申告書には計算誤りのため課税価額は一、九一五万八四一円で、相続税額は一〇八万四、三〇〇円と記載)であり、右西村博文の相続財産にかかる課税価額が六、六三一万八、四三八円で、これに対する相続税額は一、〇六八万三、一〇〇円であり、右山田廣子の相続財産にかかる課税価額が二、六〇八万八、四六九円で、これに対する相続課税は四〇九万五、一〇〇円である旨の虚偽の相続税の申告を提出し、もって不正の行為により右相続にかかる右西村博の正規の相続税額二、〇七〇万四、二〇〇円との差額一、九〇八万五、七〇〇円を、右西村博文の正規の相続税額九、二〇〇万二、二〇〇円との差額八、一三一万九、一〇〇円及び山田廣子の正規の相続税額二、六八九万二、九〇〇円との差額二、二七九万七、八〇〇円をそれぞれ免れた際、同年一〇月二七日ころから同年一一月八日ころまでの間、前記事務所等において、右情を知りながら、右相続税の申告書等を作成するなどし、もって右西村博らの見右犯行を容易ならしめてこれを幇助し

第四  中川増穂、前記鈴木元動丸、同長谷部純夫らが共謀のうえ、右中川増穂の実父中川佐一が同五七年一〇月一四日死亡したことに基づく右中川増穂の相続財産にかかる相続税を免れることを企て、右中川増穂の相続財産にかかる実際の課税価額が五億三、二八九万六三二円で、これに対する相続税額は一億四、五九五万七、六〇〇円であるにもかかわらず、被相続人中川佐一が前記有限会社同和産業から三億五、〇〇〇万円の債務を負担しており、右中川増穂において右債務を全額承継したと仮装するなどして、同五八年四月一一日、前記所轄東山税務署において、同署長に対し、右中川増穂の相続財産の課税価額が九、四二五万六、二二三円で、これに対する相続税額は三七一万三、四〇〇円である旨の虚偽の相続税の申告書を提出し、もって不正の行為により右相続にかかる正規の相続税額一億四、五九五万七、六〇〇円との差額一億四、二二四万四、二〇〇円を免れた際、同年三月中旬ころから同年四月五日ころまでの間、前記事務所等において、右情を知りながら、右相続税の申告書等を作成するなどし、もって右中川増穂らの右犯行を容易ならしめてこれを幇助し

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書五通(検第六九号、第七〇号、第七二号、第七四号及び第七九号)

一  大蔵事務官作成の捜査報告書謄本

判示第一及び第二の事実につき

一  被告人の検察官に対する供述調書(検第七八号)

判示第一の事実につき

一  被告人の検察官に対する供述調書二通(検第七六号及び第七七号)

一  駒井とも子、駒井秀雄、西村トシエ、辻いと江、笹井カズエ、駒井弘(二通)、村井英雄(四通)、長谷部純夫(検第一五号)、鈴木元動丸(検第一六号)の検察官に対する各供述調書謄本

一  大蔵事務官作成の証明書謄本(検第二号)

判示第二の事実につき

一  被告人の検察官に対する供述調書(検第七一号)

一  林政男、澤田圭司(二通)、澤田昭子(二通)、小原靖弘(二通)、長谷部純夫(検第二九号)、鈴木元動丸(検第三〇号)の検察官に対する各供述調書謄本

一  京都市西京区長作成の戸籍謄本(検第二〇号)

一  大蔵事務官作成の証明書謄本(検第一九号)

判示第三の事実につき

一  被告人の検察官に対する供述調書(検第七三号)

一  山田泰男、西村博文(三通)、西村博(二通)、山田廣子、西村昭和(三通)、長谷部純夫(検第四六号)、鈴木元動丸(検第四七号)の検察官に対する各供述調書謄本

一  京都府八幡市長作成の戸籍謄本(検第三五号)

一  大蔵事務官作成の証明書謄本(検第三四号)

判示第四の事実につき

一  被告人の検察官に対する供述調書(検第八〇号)

一  善辻さき江、船野里子、中川良雄、中川増穂(六通、検第五五号ないし第六〇号)、長谷部純夫(検第六二号)、鈴木元動丸(検第六三号)の検察官に対する各供述調書謄本

一  京都市山科区長作成の戸籍謄本(検第五〇号)

一  大蔵事務官作成の証明謄本(検第四九号)

(法令の適用)

一  罰条

判示各所為につき

刑法六二条一項、相続税法六八条(懲役及び罰金を併科)

一  法律上の減軽

刑法六三条、六八条

一  併合罪の処理

刑法四五条前段、四七条本文、四八条二項、一〇条(懲役刑については犯情の最も重い判示第四の罪の刑に加重、罰金刑については判示第一ないし第四の各罪の罰金額を合算)

一  労役場留置

罰金刑につき刑法一八条

一  執行猶予

懲役刑につき刑法二五条一項

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 大谷正治)

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